あの月が丸くなるまで

「怒鳴ったりしたわけじゃないの。ただ、無言で思い切り壁叩いてへこましちゃった。その時、玉木さんを睨んだあいつの迫力ったら、クラス中が静まり返ったわよ。上坂のあんな顔、多分、誰も見たことがないんじゃないかな、ってくう達と話してたの。美希がまだ意識を取り戻す前の話だから、こっちも少し動揺してたし」

「あんたでも動揺することがあるんだ」

 怒った上坂に、動揺する冴子。どっちも、私は見たことがない。

 それほど、心配させちゃったのね。



「ごめんなさい」

「うむ。罰として、さっさと元気になること。今日のノートは、明日見せるから」

「今日じゃなくて?」

「今日はまだ、勉強なんかしないで寝てなよ。なにせ、怪我したのが受験生の最大の武器なんだから」

「来年、大学生になれるかなあ」