あの月が丸くなるまで

「頭、大丈夫?」

「まだ少し痛むけど、大丈夫」

「ワタシ、ダレダカワカリマスカ?」

「鷹高クールビューティーで英語教師と付き合っている小野冴子さんです」

「あんたそれ、人前で言ったら息の根とめるわよ」

 涼しい顔で言って、冴子はベッドの近くに座り込んだ。私が起きようとすると、わずかに顔をしかめる。


「起きて平気?」

「うん。検査結果もなんともなかったし、大事を取っていただけだもん。明日は、学校行くよ」

「さすがに、青石さんたちもこりただろうから、もう手出しするようなことはないと思うよ」

 冗談のつもりだったんだろうなあ。私は、軽く笑ってみせる。