あの月が丸くなるまで

「いいの?」

「何が?」

 上坂の帰った後姿を見送って、ママが言った。

「あの子、美希の彼氏じゃないの?」

「違うわよ。たまたま、保健室にいただけ。あんななりしてお人よしだから、か弱い女子をほっておけなかったみたい。それだけ」

 私は、そう言うと、もう一度目を閉じた。

 ごめんね、上坂。でも、上坂が彼氏なのは……私が彼女でいられるのは、今だけだから。そんな機会ないだろうけど、もし万が一この先ママが上坂と会うことがあっても……その時の私たちは、もう、他人だから。

 転んだせいかな。あちこちが……痛い。



  ☆



「美希、入るよ」

 次の日。昼前に退院した私が自宅の部屋で寝ていると、学校終わった冴子がお見舞いに来てくれた。