あの月が丸くなるまで

「……ごめん」

「上坂のせいじゃないよ」

「でも……」

 私が目をあけると、見たこともないほど真剣な目をした上坂がいた。その上坂に、私は、ふ、と笑ってみせる。

「らしくないよ、そんな顔。いつもみたいに、笑ってよ」

 手を伸ばしたら、その手を上坂が握った。


「さすがの俺も、こんな時に笑えない」

「こんな時だから、笑うんじゃない。ほら、私、大丈夫だったでしょ?」

「美希……」

「上坂のせいじゃない」

 私は、もう一度言った。


「条件付きだろうとなんだろうと、上坂の彼女でいることを選んだのは、私だもん。謝らないで。私の選択を、上坂が否定しないで」

「……うん」

 ようやく、上坂は微笑みらしきものを作ってくれた。そうして、私の手を自分の頬に沿えると、自嘲するようにため息を漏らす。