どうみても染めている茶髪(校則で染髪は禁止されているんだけど)に、耳にはピアス穴(校則で装飾品は禁止されているから穴だけだったけど)。シャツのボタンを開けているせいで、ネクタイがゆるく首にぶら下がっている。ブレザーの前は開け放して、その袖は両方ともまくり上げられていた。そんなふざけた格好なのに、すべてがプラスに向くという美青年。

 同じ三年生の、上坂蓮だった。有名人だから名前と顔は知ってるけど、個人的に話をしたことはあまりない。私を呼びだしたのがコレとは思えず、とっさにあたりを見回してしまった。

「や、梶原さん」

 けれど上坂は、にこにことした笑顔で私に手をあげる。……彼にそんな風に親しげに声をかけられる覚えがない。