「お弁当、食べてて……」

「美希?」

 不審そうな上坂の声が、ずいぶん遠くで聞こえる。

 ふわふわと……なんだか、みんな遠い。

「上坂が、ぐちゃぐちゃになったお弁当、食べたいって言ってくれて……」

「……うん」

「卵焼き美味しいって、言ってくれて……」

「うん」

「そんな風に褒められたのが、初めてで……」

「うん」

「……私、多分、嬉しかったの……」

「……うん」

 なんだか笑うのに失敗したような顔の上坂。きれいだなあ、なんてぼんやり考えていたら、その手が、私の額にそっと触れた。


 途端に、激しく頭が痛んで、反射的に身体を丸める。

「いたたたたたた!」