あとで考えれば、そっちじゃなくて、まずは床に手をつけばよかったんだ。けれどその時の私は、目の前に迫ってくるそれを受け止めようと手を伸ばしてしまった。次の瞬間、後頭部に強い衝撃をうけて、そのあとのことは、憶えていない。


  ☆

 目を開けたら、世界が白かった。



「美希?」

 ぼんやりとした白い視界の中に、笑っていない上坂がいた。そんな表情の上坂は……ああ、そうだ。東京タワーで、見たことあるなあ。学校では見たことない。

 ということは、これあの時の夢なのかなあ。



「気がついた? 頭、痛くない?」

「……頭?」

「お前、思い切り頭打ったんだよ。それでそのまま気を失って……」

「お弁当……」

「は?」