「普通、デート中にかかってきた電話に出ないって言ったら、浮気相手からの電話って相場は決まってるんだけど」

 のんびりと冴子が、頭上をとんでいくボールを見ながら言った。


 五時間目の体育は、バレーボール。うらうらとした陽気に誘われて眠いのか、みんなまったりとボールを追っている。


「そんなの、今さらだよねえ。あいつ、女遊び激しいこと隠す気もなかったみたいだし、実際呼び出されてそのまま遊びに行っちゃったこともあったし」

 じゃなければ、よほど嫌な相手とか。あ、もしかして、誰かおうちの関係の人かな。こないだ会った秘書さんとは、あまりいい雰囲気じゃなさそうだった。

「それかさ」

 頭の上に来たボールを、冴子は軽く当てて相手コートに戻した。勝負を決めようというよりは、のんびりラリーを続けようというスタンスの試合だ。あっちのコートでも、ぽーんぽーんと軽やかにボールが上がっている。