「ホント。美味しい」

「っしゃ! やったね!」

 両手をにぎって、上坂は全身で喜びを表す。


 器用そうだなと思った手は、やっぱり器用だったらしい。握力はともかく、そのおにぎりはきれいな三角形をしていた。はじめのうちは、なかなかこんな風には綺麗な三角形にはならないんだけど。

 もう一口かじりながら、お弁当を開け始めた上坂に言った。



「自分で、作ってみたんだ」

「うん、俺、料理なんてやったの初めて。あ、今日はミートボールだ。やったね」

 おにぎりを料理と言っていいのかは微妙なとこだけど、初めてならそんなものかしらね。

「怒られなかった?」

 上坂の家は、男子厨房に入らず、の厳しい家だって言ってたから、下手に台所になんか上坂がいたら怒られるんじゃないだろうか。