私たちがいたのは、一階のロビー。ガラス張りだから、外からは話している私たちの姿が丸見えになっていただろう。

 走ってきたから、息切らしていたんだ。でも……なんで?

「とにかく」

 上坂は、きつい視線で岡崎さんを見返した。


「絶対、コイツには手を出すな」

「蓮、本気なんだ?」

 岡崎さんは、平然と上坂の視線を受け止めている。

「でもさあ、そんなつまんなそうな子、蓮のタイプじゃないだろ。俺はどっちかって言うと、こないだの、真奈美だっけ? ああいう甘え上手な……」

「余計な口出すなよ」

 岡崎さんの言葉を途中で止めると、上坂は、じゃあな、と言って私を連れて歩き始めた。