あの月が丸くなるまで

 流れる人波を見ながらなるべく意識しないようにしているのに、私の耳はがっつりとその会話を追ってしまう。いつまでも途切れないそれは、私といるときよりよほど楽しそうだ。

 というか、仮にも『彼女』といるときの会話じゃないよね、それ。

 ……なんだかイライラしてきた。

「うん。いいよー。じゃ、またねー」

 ようやく上坂が通話を切ると、私は上坂に向き直る。

「私、帰る」

「え?」

 驚いたような上坂の顔を、多分私は無表情のまま見ていた。

「なに、どうしたの?」