あの月が丸くなるまで

「めがねもかわいいけどね。ちょっと、動かすわよ」

 座っていた椅子がくるりと後ろを向いて、なにやらむにむにと顔をいじられ始めた。

「もしかして、メイクとかします?」

「少しだけね」

「あの、私がメイクなんて、似合わないです」

「そんなことないわよ」

「でも……」

「心配しないで、アタシにまかせときなさい」

 手を止めようとしないケンジさんに、抵抗することをあきらめる。

「……上坂、そこにいるの?」

「ん? いるよ。なに、心細いの? なんだったら、手、握っていてあげようか」

「絶対いらない。……あっち行っててよ。あんまり、見ないで」