あの月が丸くなるまで

「あまり内面をみせないからね、あの子。でもね……」

「ちょっと、ケンジさん?」 

 と、ちょうどドアが開いて、上坂が顔を出した。

「何、話してんですか」

「いいことしか話してないわよ」

「そうは聞こえないですけど?」

「気のせい、気のせい」

 言いながら、髪をそろえ終えたケンジさんは、ムースらしきものを髪にわしわしと塗りたくる。上坂は、椅子を一つ引っ張ってきて私の後ろに陣取った。


「余計なこと言わないでくださいよ」

「あら、ここへ連れてきたってことは、多少のことは覚悟してんでしょう?」

「そうですけどさあ……」

「ありえない褒め言葉を聞いたわ」

 ため息をつきながら言ったら、ぬ、と上坂が後ろから顔を出した。