あの月が丸くなるまで

 以前一度行った美容院で、踊るようにはさみをやたら振り回して髪を切る美容師さんに当たったことがある。おそらくパフォーマンス的な目的だったのだろうけど、目の前で凶器となるハサミを振り回されるのは、かなりの恐怖だった。でもケンジさんの切り方は、意図したものなのかそうでないのか、視界にハサミがあまり入ってこない。丁寧に髪を触ってくれる手つきが、心地いい。


「美希ちゃんみたいな子がまだいるなら、最近の若いコも捨てたもんじゃないわよね」

「若いコ……ケンジさんって、いくつなんですか?」

「やあねえ、アタシに歳を聞くなんてヤ・ボ」

 ……このノリ、上坂にめっちゃ似てる。

「蓮があなたを気に入るのも、わかるわあ。ほら、ああ見えて蓮も真面目だから……」

「ええっ?! あれがですか?」