あの月が丸くなるまで

「髪、切るんですか?」

「毛先をそろえるだけよ。ずいぶん、美容院にも行ってないでしょ。伸ばしてるの?」

「そういうわけじゃないんで、短くしてもかまわないです」

 しゃれっ気のない私が髪を伸ばしているのは、ただ美容院に行くのが面倒なだけだ。長くしていれば、どんなに髪がまとまらなくても、最終手段として一つに結わえるだけでいい。髪は、短いほうが手がかかる。


 ケンジさんは肩のあたりで私の髪をそろえて、鏡の中を覗き込んだ。

「そうねえ……短いのも大人っぽいわね。うーん、悩むとこだけど、せっかくきれいなんですもの。このままの長さを生かしましょう」

 しゃきしゃきと、リズミカルな気持ちいい音が響く。なんとなくその手つきを見ていて、この人上手い人なんだなあ、と思った。