あの月が丸くなるまで

「まあ、上坂の彼女?」

「そう。綺麗な子でしょ」

 ケンジさん、と呼ばれた男性は、まじまじと私の顔を覗き込んだ。真剣に見つめてくる視線に気圧されて、ひきつりながらもなんとか笑顔をつくる。

「こんにちは……」

「はい、こんにちわ。ちょっと失礼するわよ」

 そう言って私を頭の先から足の先まで見下ろしたケンジさんは、最後に私の髪を一すくい取ってまじまじと見つめた。

「艶のあるキューティクル……しっかりとしたコシ、弾力……見事ね。これなら、ゴムでしばっても跡つかないでしょ。高校生?」

「俺と同じ、高校三年生」

「ふーん」

 そう言ってその男性は、手を離して今度は私の顔を覗き込む。間近にあるその瞳がぎらぎらと輝いていて、思わず一歩下がりかけた。