あの月が丸くなるまで

 ☆


 電車に揺られてついた先は、渋谷にある美容院だった。落ち着いた趣の外観は、あたりの雰囲気から一歩引いた感じ。ここって、私たちの世代じゃなくて、もう少し上のお姉さま向けの美容院じゃないのかな。

 上坂がガラスのドアを開けて中へ入ると、控えめにいらっしゃいませの声がかかった。美容院独特の匂い。店内には小さくジャズがかかっている。

 受付にいた細身の男性が、私たちに気づいてカウンターの向こうから出てきた。やけにくねくねとしたその人は、上坂に向けて満面の笑顔を向ける。


「あら、蓮じゃないの」

「こんにちは、ケンジさん」

「珍しい時間に来るのね。どうしたの?」

「今日はケンジさん、ここにいるって言ってたから。この子、どうです?」

 ずい、と上坂は私の背を押した。

「え?! ちょっと、上坂……?!」