あの月が丸くなるまで

 うっかりあげてしまった私の声で、冴子も気づいた。

「五組、次体育なんだ」 

 体操服の集団の中に、上坂を見つけてしまった。同時に、上坂も私に気づく。


 やつは、少しだけ微笑むと、私に向かって片手をあげた。それを見ていた周りの男子にからかわれたらしく、みんなで小突き合いながら笑っている。そんな風にじゃれる様子は、こっちから見ていても微笑ましい。

 相変わらずだなあ。


「ずいぶんと仲良くなったじゃない」

「そうでもないわよ」

「じゃあその手は何よ」

 軽く振り返した私の手を、冴子がじーっと見つめている。

 まあ、一応手くらいは降り返してやっても、いいかなー、って……そんなたいした意味はないわよ。ないわよ。

 口に出したら言葉通りじゃない感情がにじんでしまいそうで、私は黙ったままだった。