あの月が丸くなるまで

「上坂は、議員になるつもりはないのね」

「ない」

 短く、でもきっぱりと上坂は答えた。

「何か他に、なりたいものがあるの?」

 しばらく黙って外を見ていた上坂が、ぽつりと聞いた。



「美希は?」

「私?」

「美希は、なりたいもの、ある?」

「あるよ。薬剤師」

「え?」

 上坂は、目を丸くして振りむいた。


「美希、薬剤師になりたいの?」

「一応。薬剤師になるか、それとも薬の研究に携わるかは、まだ決めかねてるけどね。子供の頃からの夢だったの」

「子供の……頃から?」