あの月が丸くなるまで

「……あんた有名人だったし。じゃ、今そんなチャラチャラしてて、怒られない?」

「怒られるどころの話じゃない。この髪だってさ」

 上坂は、少し長めの前髪を、手で伸ばして引っ張る。



「地毛だってんのに、黒く染めろって言われた。染髪は校則で禁止って言っても、親父にとっちゃ、世間体の方が大事なんだよ」

「だから、お母様は髪を染めているのね」

 上坂が、ちらりと私を見る。

「去年、偶然見たテレビの上坂議員の何かの特集で、お母様を見たわ。黒髪がきれいな和服の美人だった。上坂議員も黒髪だし、だから私、上坂の髪って染めてるんだと思ってたの」

「そっか」

 上坂は、また眼下の景色に視線を戻した。