あの月が丸くなるまで

 ああ、だから、以前料理してみれば、って言った時に、あんなに驚いていたのか。そういうお家なら、男の人は料理なんてしないんだろうなあ。そう言ったら、上坂はわずかに苦笑した。


「自分で料理するなんて、考えたこともなかった。多分、親父もそうなんだろうな。そのくせ見栄っ張りだから、家事はすべて家政婦にやらせて、母さんは料理なんてしたこと……させてもらったことがない。優雅に後援会の相手をしてればいいんだってさ。俺も子供のころから、議員の息子として品行方正であれ、成績優秀であれ、って厳しくしつけられてきた。少しでも成績落とそうものなら、親父にすげえ怒られたな」

「上坂、高校入ったころはもっとまじめな雰囲気だったもんね」

「よく知ってんな」