あの月が丸くなるまで

 急に、背後から声をかけられて上坂の顔がこわばった。振り向くと、スーツを着た真面目そうな男性が立っている。

「こんなところで痴話げんかですか。少しは対面というものをお考えになったらいかがです?」

 言葉は疑問形だけど、責めるようなその口調に私まで体がこわばる。

 誰?


「……松井さんには関係ないだろ。なんでこんなとこにいるんだよ」

 上坂の口から出たのは、初めて聞く冷たい口調だった。

「それこそ、あなたには関係のない話です」

「どうせまた、接待にでも明け暮れてんだろ」

「大切なことです。蓮様も、いい加減、お父様のお立場も考えてください。そうやって乱れた生活をしていると、いつかご自分にも……」

 お父様?