あの月が丸くなるまで

 聞き返すと、我に返ったように上坂が目を見張った。

「なんでもない。それよりさ、今度の週末だけど……」

 それから上坂は、いつものように明るい態度で食事を続けた。


  ☆


「本日は、ありがとうございました」

 食事が終わって立ち上がると、さっき席まで案内してくれた年配の男性が深々と頭をさげた。上坂は、そのまま支払いもせずに店を出ようとする。

「上坂、支払いは?」

「ここ、いつもツケだから」

「へ?」

 すたすたと店を出てしまう上坂を追おうとして、私は立ち止まった。見送ってくれる男性に、私はにこりと笑う。