あの月が丸くなるまで

「今の、ものすごく言葉を選んでくれたでしょ。暗いがり勉だってはっきり言ってくれてもいいわよ。前から鉄仮面とか呼ばれてんのも知ってるし。他人に何言われようと構やしないわ。仲のいい人たちは、ちゃんと私のことわかってくれてるもの」

「クールビューティーは知らなくても鉄仮面は知っていたのか」

「悪口程、耳に入りやすいのよ」

「ああ……そうだな」

 ふ、と上坂が笑う。

 ……うん、上坂だって、そんな風に笑えるんじゃない。わずかに目を細めた優しい笑顔を、黙って見返す。そんな表情、学校では見たことがないわ。


 しみじみした声で、上坂が呟く。

「美希って、他にどんな顔があるのかなあ」

「たいして面白い事もないわよ?」

「それでも」

 何かを考え込みながら、上坂は言った。

「お前のこと知りたいし……俺のことも……」

「……上坂の、こと?」