あの月が丸くなるまで

「ちょっと、上坂っ! なんで……」

「店入るのに、制服じゃまずいから。これも邪魔だな。コインロッカーにでも放り込んどくか」

「だからって、あっ、支払い!」

「いーの、いーの。あ、いつもの弁当のお礼ってことで」

「そんなわけには……上坂っ!」

 私の話を聞こうとしない上坂は、なぜかやけにご機嫌だった。

 振り回されている……

 そんな自分を自覚しながら、私は上坂のあとを追った。


  ☆


「いらっしゃいませ、上坂様」

 品の良い年配の男性が、上坂に向かって丁寧にお辞儀する。

「ランチ、まだ食える?」

「もちろんでございます。どうぞ、こちらへ」


 ランチ。

 私の中のランチのイメージは、軽くてお得なお昼ご飯、って感じなんだけど。

 上坂がひょいと気軽に入ったのは、そのイメージとは百八十度かけ離れたおちついた感じのレストランだった。