あの月が丸くなるまで

「ごめん、ちゃんと家まで送るから」

「上坂こそ、電車通学でしょ。駅はすぐそこよ」

「いいって。そしたら、もう少し梶原さんと一緒にいられるし」

 にっこりと言って、私に向かって手を出す。

「何?」

「ん、持つよ。そっちのバッグ」

 上坂は、通学カバンとは別にある私のバッグを指した。

「自分で持つわ」

 そう言ってバッグを手にすると、上坂はどうしたことか、目を丸くして動きを止める。

「上坂?」

「や……遠慮すんなって。うわ、重。何入ってんのこれ」

 私の手からバッグを取り上げた上坂は、おそらく想像以上だっただろうそのバッグの重さに、わざとらしく姿勢をくずす。柔らかい髪が、私の鼻先をくすぐった。