「 とっとと死んでくれ 」

両親から言われたショックな言葉だった




私が今住んでいるのは田舎だ
決して見渡す限り田んぼ とかいうほどではない

小さい頃の記憶は あまり無いが

「 お嬢ちゃん 飴ちゃんいるか〜? 」
「 ちゃうねん!」

という言葉だけは鮮明に残っている
後から母親に聞いた話によると 幼い頃
私は関西に住んでいたらしい


当時の私は活発な子で
よく男の子と取っ組み合いをして
服を汚して帰ってきたそうだ。


今でも活発な子がクラスの代表 とかになるように
私は幼いながら カーストの上位にいたんだと思う

おままごとではお母さん役
男の子をペット役にして足蹴にしていた

今考えると嫌な女の子だ


その頃の私には あかりと しほ という親友がいて
いつも一緒にいたらしい

あかりとしほと 私のおばあちゃんで
よく団子屋さんに行った
私は三色団子しか食べれなかったのだけど
皆はみたらし団子を食べていた

そんな日常がきっと楽しかったんだと思う


ある日突然 あかりが来なくなった
最初は お休みかぁ という感じで
何とも思っていなかったのだけど

あまりにも来ないから おばあちゃんに聞いた

「 なぁ、ずっとあかりが来んねん。何でなん?」

するとおばあちゃんは私に

「 ジコにあってしもうて 動けへんねんて。」

と言った。

当時のことはよく分からないけど
保育園生ぐらいだったんだろうと思う

そんな私に ジコ が何か分かるはずもなく
ほぉか、いつか戻ってくるねんな。
またおままごとで遊ばなな。
なんて思っていた



そのまま何ヶ月かは経ったと思う
その間 私はしほと一緒にいたし
あかりのことを忘れたことは無かったけど
別に寂しいとかは無かった。


その日は雨だった
おばあちゃんに手を引かれて

あめあめふれふれの唄を歌いながら
オレンジ色の長靴を履いて
水溜まりにジャンプしながら帰った


家に着いて しばらくして
玄関を叩く音がした


おばあちゃんは少し膝が悪かったし
何故かドアを開けるのも好きだったので


は〜〜い!どちら様ですか〜〜!と言いながら
玄関を開けた




そこに立っていたのは
鬼のような顔をしたあかりのお母さんだった



あら、あかりおるんかな?
おばちゃん えらい怖い顔してんなぁ。なんて思いながら外に出ようとした その時だった


パチンッ


左頬に痛みが走った

よく分からなかったけど あかりのお母さんにビンタされた。


「 …………いや。」

あかりのお母さんが何か言っているけれど
私はびっくりしてそれどころではない。
呆然としていると

「 あんたのせいや! 」

と言って あかりのお母さんが掴みかかってきた
おばあちゃんが止めてくれた
その場の事はそれくらいまでしか覚えてない。

だけど はっきり覚えている
あかりのお母さんにビンタされたこと。
言われたこと。

「 あかりはずっとあんたを待ってた。待ってたのに。何で1回もお見舞い来ぉへんかったんや? 事故に遭ったって知ってたやろ!何が親友や?何腑抜けた顔してんねん… あかりはあんたのことずっとずっと待ってたのに…… 」


そう言ってあかりのお母さんは泣き崩れた

私には何が何だか分からなかった
おばあちゃんも涙を浮かべて あかりのお母さんに謝っていた。
私はどうすればいいのか分からなかった。




その夜 おばあちゃんと布団の中で話をした。

「 人間はな、いつか死んでしまうんや。
嫌でも死んでしまう。そういう運命なんや。
それが早いか遅いかなだけなんやで。
せやけどな。
それまでに何をしてあげられるか
何を残してあげるかが大事なんやで。」

と おばあちゃんは言った

死ぬというのは おじいちゃんや おばあちゃんだけじゃないことを知った。
死んでしまうまでに 何をして、何を残してあげるかが大事なのも知った。
あかりが死んだのも知った。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 続