9月になると始まるのは、文化祭の準備だ。


私のクラスはめぐちゃんと成績トップの佐々木くんが実行委員になった。


桃宮高校の文化祭は1日目が学園関係者のみで2日目は一般公開される。


私のクラスの出し物は劇に決まった。


脚本は元演劇部の田中さんが書き、演技指導は演劇部顧問の松山先生が担当する。


今日は配役を決める日。


私には関係ない。


どうせ雑用だ。


それくらいでちょうど良い。



「ちーちゃんはさ、何かやりたいのある?」



夏休み明けの席替えで隣になっためぐちゃんが聞いてくる。



「私は裏方でいいよ」


「何いってんのさ!ちーちゃん、空くん見に来るんだからいい役ゲットしないとじゃん!」



めぐちゃんの声は迷惑なくらい良く響き、クラス中に聞こえてしまう。


冷ややかな視線をひしひしと感じるが、私は無視した。


というより、無視するしかなかった。


そうしないと乗り越えられない。



「ウチはね、もちろんヒロイン狙うよ!ラブコメだもんね。もちろん律に相手役やってもらう」


「いいね。2人なら間違いないよ」


「そうかなぁ?!」


「うん。いいと思うよ」


「よし、じゃあ頑張ろうっと!」



頑張らなくてもめぐちゃんはヒロイン役を勝ち取った。


もちろん相手役はりっくん。


その配役にクラス中が沸いた。



「めぐと陸は最強カップルだ!」


「絶対客入るよ!」


「美男美女のラブコメだもん。見ない人逆にいないわ」



私は無心で2人に拍手を送っていた。