引退したものの、変わらない関係もあって、私はそれを保持するために日々精神を削っていた。



「ちーちゃん、今日も空くんと来たの?ラブラブだねえ」


「まあ」


「否定しないんだ」


「まあ」



否定するなって言われているから。


皆は知らない空くんの顔を私は知っている。


何を誰を恨んでも私の置かれている状況は変わらない。


私は色んなことを諦めていた。



「あっ、陸来た!」



りっくんが教室のドアを勢い良く開け、だるそうに入って来る。


私はすかさず目を背ける。



「陸おはよ!」


「おはよ」



そして私の横を通る。



「おはよ」


「おはよう...」



りっくんはもう、私の頭に手を乗せない。


それで毎朝しゅんとなる私は本当に罪深い人間だと思う。


寂しいなんて、恋しいなんて、今更思っちゃいけない。


私には空くんがいてめぐちゃんとりっくんはカップルなのだから。


今までの当たり前を忘れるんだ。


忘れるしかないんだ。


私の心は分厚い雲がかかり、小雨が降っていた。