キミに伝えたい愛がある。

結局私達は空くんが大判焼き、私がりんご飴を買ってそれを食べながら射的の列に並んだ。



「花火上がるのは7時からみたい。あと3時間あるから、いっぱい遊べるね」


「そうだね」


「ちゆりちゃんは小さい頃、夏祭りとか行ってた?」


「近所に神社があるからそこの夏祭りに行ったりしてた。めぐちゃんとりっくんと3人で...」



次の瞬間、私はりんご飴を落としてしまった。


なぜなら...



「りっくんって呼んでるの?」


「あ、うん。幼なじみだから、名残で...」


「幼なじみってそんなに偉い?」



空くんが怖い。


そう思ったのは、今日が初めてだった。


手が小刻みに震え、注意しないとバッグさえも地面に落としそうになる。


まだ形を残したりんご飴は砂にまみれてこちらをじっと見つめている気がした。



「その呼び方を止めないなら、僕のこと、空って呼び捨てにして。僕はちーちゃんって呼ぶから。ってことで練習。はいっ」


「えっ...」


「恥ずかしがらないでよ。くんを外すだけでしょ?」



迫り来る恐怖。


背中に冷や汗が流れる。


手もじんわりと汗をかいてくる。


私...倒れそう。



「はい、じゃあ次の人...。そこの美男美女!射的やんだろ?」



おじさんの言葉で正気を取り戻した。


手の震えは一時的かもしれないが、止まった。


おじさんに笑顔を向けることだって出来る。



「2人です」


「んじゃあ、50円で3回ね」



私はきっかり自分の分をおじさんに渡した。



「じゃあ、僕は100円で」


「おう、いい心意気じゃねえか。カノジョの分までしっかりゲットしろよ!」


「ええ、もちろんです」



...今だ。



「空...頑張って」



睨まれる前に言ったら、空くんはとびきりの笑顔を向けてくれた。


私が空くんの期待に応えれば、空くんは笑ってくれる。


空くんと付き合うって決めたんだから、空くんを悲しませたらダメだ。


空くんの...カノジョとして、私は精一杯空くんを応援するんだ。