キミに伝えたい愛がある。

予定通り食事会には参加した。


行きの車の中では意気消沈してほとんど話せなかったけれど、食事中は幾度も言葉を交わした。



「へぇー、ちゆりちゃん、吹奏楽部か。奇遇だな。僕も吹部だったんだよ。で、サックス」


「そうだったんですか。びっくりです」


「新堂さんは全国大会で銀賞になったのよ」


「すごいですね。私なんかとは大違い...」



こんなところに来てまで卑屈になるのかと肩を落とすと新堂さんが優しい口調で言った。



「ちゆりちゃん、他人と自分を比べたらダメだよ」


「えっ...」



新堂さんに私の心が見透かされてる...?


私は驚いて目を丸くし、新堂さんの次の言葉を待った。



「僕も学生時代そうだった。


他人とは違う価値観、思考を持つ自分が嫌でたまらなかった。


でも、ある時気づいたんだ。


僕は僕のままでいい。


一度きりの人生、やりたいことをやろうって。


他人と違うことで社会に貢献して人々をあっと言わせるんだってね」



私は新堂さんの言葉に胸を打たれた。


パイオニア精神の塊みたいな人は、他人と自分を比べていちいち落ち込んだりしないで、むしろそれをプラスに捉えているんだ。


今の私にそれは難しい。


でもいつか自分を認めて自分をまるごと愛せるようになりたい。


そう思った。



「さてと...。で、ちゆりちゃんは好きな曲とかあるの?」


「私は...」