キミに伝えたい愛がある。

しばらく歩いていると、後ろから足音が聞こえてきた。


私はその足音から離れるように足を速めたが、途中で足音が速くなり、追い抜かれた。


そして私の目の前に立ち、行く手を阻む。



「莉音ちゃん...どうしたの?」



私は驚き、1歩後ずさった。


足がすくみ、喉がからからになって唾を飲み込んだ。


久しぶりに対峙した彼女の顔はいつになく不安そうで、いつもの自信に満ち溢れているような挑発的な目をしていなかった。



「愛宮先輩は空先輩と別れたんですか?」



私は言葉を失った。


空くんと別れたのか別れてないのか、自分でも分からなかった。


あの日りっくんに追い払われてから、私に連絡をして来なくなった。


学校には卒業式事前練習の日以外は登校しなかったし、空くんの姿はしばらく見ていない。


自然消滅。


それが答えなのだろうか。



「私、空先輩のことがずっと好きだったんです。中学1年生の春に出会ったあの日からずっと...」



莉音ちゃんは今にも泣きそうな表情とか細い声で私に必死に伝えようとしている。


私は黙って次の言葉を待った。



「でも今は...分からない」


「分からない?」


「舞ちゃんが愛宮先輩の様子が変だと感づいて愛宮先輩のクラスの...速水先輩?に聞いたことがあったんです。


確か、去年の冬休み前のことです。


愛宮先輩に最近挨拶しても返してこないし、なんだかつらそうだって。


そしたら、空先輩が怪しいって言ってて...。


舞ちゃん、速水先輩からライン聞いて空先輩の情報を仕入れて、そして私に言ってきたんです。


バレンタインの日、愛宮先輩が空先輩に脅されてパニックになったと」



まさか舞ちゃんがりっくんと繋がっていたとは...。


全く気付かなかった。



「私はそんなこと信じたくなかった。


好きな人が私とは別の人と付き合ってるとか、その人が暴力的な人だとか。


だからはっきりさせたいんです。


今ここで愛宮先輩の口から本当のことを聞きたい。聞かせてください」