キミに伝えたい愛がある。

空くんの後をついてきて北風がビュービュー吹き荒れる体育館の裏にやって来た。



「空くん、ごめんなさい」



私は泣くのを堪えて何度も謝った。



「ちーちゃんさ、僕の言うこと全然聞けないよね?」


「ごめんなさい...」


「名前呼び捨てにしてって言ったし」


「ごめんなさい...」


「受験なんて、数ヶ月前から準備したじゃん」


「ごめんなさい。本当にごめんなさい...」



そう言った次の瞬間、私は氷のように冷たい地面に叩きつけられた。


空くんがしゃがみこんで、私を睨む。



「どうして...。どうして出来ないの?」


「本当にごめんなさい...」


「僕の質問にちゃんと答えてよ。ねえ?」



頭を撫でられながら拷問を受けているうちに恐怖から震えが止まらなくなった。


呼吸も乱れ、その場にうずくまる。



「えっ!ちーちゃん大丈夫?ちーちゃん!」



私...死ぬの?


こんなことで、こんな場所で死にたくない。


誰か...助けて。



「何やってんだ?!」


「速水くん...」



こういう時にやっぱり来てくれるのは、りっくんだ。


頭では理解していても、手を伸ばしたくなってしまう。



「ちー、しっかりして!」



りっくんは必死に私の背中をさすってくれる。



「大きく深呼吸して」



りっくんの言う通りに深呼吸を繰り返すと、次第に落ち着いてきた。



「ちーちゃん...」


「青木くん、お願いだから帰ってくれる?」



空くんにりっくんが痛烈な一言を浴びせる。


空くんはうろたえ、さっきまでの余裕は無くなり何もすることなく黙っている。



「はっきり言っていい?」


「えっ...」


「もう2度とちーに関わるな」


「でも...」


「帰ってくれ...。これ以上俺の大切な人を傷付けるな!」



空くんは慌てて荷物をまとめると、名残惜しそうにこちらを見つめながら去っていった。