キミに伝えたい愛がある。

聖なるバレンタイン当日。


大学受験合格発表ということもあり、私は登校して学校のパソコン室にいた。


最近の大学は進歩していてパソコンで合格発表が見られる。


確認したら先生に言いに行くことになっている。


緊張してまたお腹が痛くなってきた。


緊張には慣れることはない。


この分だと大学生になっても緊張することが多々ありそう。



「ちーちゃんおはよう」


「おはよう」


「発表もうちょっとだね」


「受かってるといいけど...」


「ちーちゃんなら大丈夫だよ」



そう言って空くんは私の左手を握ってくれた。



「大丈夫。ちーちゃんには僕がいる」



その言葉を聞けば安心する...なんていうことはなくて、むしろ緊張は強まった。


ここで受験に失敗したら空くんにどれだけ責められるか、そして私はどれだけ空くんを傷付けてしまうか。


そんなことを考えたら手が震え出した。



「ちーちゃん大丈夫?」


「大丈夫だよ。あっ、あと2分だ。画面開くね」



手が震え過ぎてキーをタッチ出来ない。


こんなに震えるのは初めてだ。


受験の時はお守りを握っていたら緊張が徐々に和らいだのに、今日はそうはいかない。


お守りとりっくんの言葉がフラッシュバックする。



―――ちーは誰のために受けるの?


―――俺はちーのために受ける。



私のため...。


なんでりっくんはそんなこと言ったの?


そんなこと言われたら私...


私...本気にしてしまう。


ますます忘れられなくなる。


本当は、今この場所で手を握ってほしいのは、


大丈夫って言ってほしいのは、


りっくん...


キミだけだよ。



「ちーちゃん...」



顔を上げると、空くんが泣いていた。


私より先に見てしまったらしい。



「ダメだった...。ちーちゃんの番号無かった...」



予想通りの結果。


私はただ俯くしかなかった。


空くんに何を言われても仕方がないと思った。


黙って受け止めるしかないんだ。



「1回さ、外出ようか」