キミに伝えたい愛がある。

受験当日。


私はお腹が痛かった。


腸が捻られるように痛く、ぎゅーと絞られているみたいだった。


緊張によるものだとは分かっているけど、一向に治まる様子はない。


私大だから3教科で入試が出来るのは良いけど、それでも約1日かかる。


早く治らないと受験突破が本当に絶望的になり、空くんをがっかりさせてしまう。


散々迷惑をかけて来たのに結果が悪かったら救いようがない。


お願い。


どうか上手くいって下さい。


早く治って下さい。


祖母と空くん、それぞれにもらったお守りを握りしめ、祈りながら開始時刻まで最後の追い込みをしていると、私の席の隣で誰かが立ち止まった。


えっ...。


顔を上げると、目があった。



「ちーは誰のために受けるの?」


「りっくん...」


「俺はちーのため。ってことで...はい」



りっくんが私の机に小さな紙袋を置いていった。


そこに入っていたのは、手作りのお守りだった。


ホルンの描かれた生地に"ひっしょう"とひらがなで刺繍がされていた。



"不器用だからごめん。


それで許して。


ちなみに俺は経済学部受けるから"



そう書かれた紙が小さく折り畳まれて入っていた。


りっくん...ありがとう。


私を心配してくれて、わざわざ同じところ受けるなんて、本当にありがとう。


でも一緒には通えない。


りっくんが大丈夫でも、私が落ちるから。


ここでお別れだね。


だから、今日だけは、その背中から力をもらってもいいかな?


りっくん...


ありがとう。


私も最後まで諦めないで頑張るよ。




試験開始の時間は寸分のくるいもなくやって来た。