あっという間に終業式を迎えた。


校長先生の長い話を聞き終え、皆ぐったりしているかと思いきや、元気が爆発していた。


理由はあれしかない。



「3学期はほとんど自由登校だよ!さいっこ~」


「めぐ張り切りすぎじゃない?さてはカレシと...」


「いやいや、陸はまだ受験終わってないから!ウチは黙って応援してま~す!」


「黙ってられないくせに~」


「そんなこと無いよ!」



めぐちゃんと私の間には明らかに大きな溝が出来ていた。


あの日、あの場所で私に決別のメッセージを送ってきて以来、事務連絡以外していない。


人生最後の席替えをし、私と離れてからめぐちゃんは他の女子と話すようになり、私との時間は無かったことのように処理された。


今までの時間は何だったのだろう。


私たちには何も残らなかった。



「愛宮さん」



後ろの席の佐々木くんが話しかけて来た。



「何?」


「これ、速水くんから」



そう言って渡されたのは1冊のノートだった。



「愛宮さんに借りてたから返すって。さっき僕に渡して帰った」



ノートなんか貸したっけ?


そう思いながらノートをパラパラとめくると、ちょうど真ん中のページに何か書かれていた。



"ちー、大丈夫?


言えないならここに書いて俺んとこ持ってきて"



私はリュックに教科書を詰め込んで、急いで教室を飛び出した。


りっくんに会いたかった。


ただ会いたかった。


話したかった。


聞いてほしかった。


私の声を、


私の話を。


ダメだって、


いけないって、


分かってる。


分かってるけど、


それでも、


それでも、


いつも


いつも


いつもいつも


私の真ん中にいるのは、


りっくんなんだよ。


私は、


私は...


りっくんが...


好きなんだ。


叶わないのに、


他人を傷付けるのに、


それでも、


好きなんだ。