キミに伝えたい愛がある。

なんて、かっこつけたのは良かったが、やっぱり彼はやって来た。



「ちゆりちゃん、ちょっと...」



ユーフォニアムの1年生を中に入れ、彼女と代わるようにして私は教室を出た。


誰もいない準備室に招かれ、問いただされる。



「高瀬さんがファーストでちゆりちゃんがサードってどういうこと?」


「莉音ちゃんは私より上手いからファーストにしたんです。サードだって大切なパートだし、私低い方が得意だから」


「確かに高瀬さんは全国にも行ったし、去年だってセカンドで出てる。だからといってこれはないよ。僕は納得できない」


「そう言われても...」



私はうつむくしかなかった。


この場合の正解など、どの教科書にも乗っていないと思う。


自分で考えて出した答えなのにダメだなんて、一体どうすれば良いのだろう。



「先生にも聞いてみるよ。今日は出張でいないから明日にでも」


「分かりました...」



ひとまず戻るしかないか。


かなり気まずいけど...。



「ちゆりちゃん、落ち込まないで。

先輩がいなくなってからも高瀬さんと2人で交互にファーストをやって来たのは分かる。

高瀬さんの方が実績も技量もあるかもしれない。でも今回は...今回は、ちゆりちゃんにやってもらいたい。

大事な大会だからこそ、ちゆりちゃんにしか出せない音で観客を魅了してほしい。

僕はちゆりちゃんの音が好きだから...」



えっ...。


びっくりした。


私の音が...好き?


私が何度も瞬きをしていると部長さんが言った。



「えっと...その...。とりあえず戻ろうか」


「う、うん」



不思議な人だ。


急にしどろもどろになるなんて。


そんな部長さんだけど、頼りにしてますよ。


と言う前に教室に到着。


その日は基礎練習と楽譜をチェックしたり、大会曲を聞いたりして時間を過ごした。