大河と朝子は笑顔で言ってくれたので藍は安心する。卵焼きを口に入れた。

「なあ霧島。すごいニュースだ」

監察医の田中聖(たなかひじり)に声をかけられ、藍は聖の方を振り向く。聖は鉄火巻きを食べながらスマホのニュースを見ていた。

「何があったの?」

「××県の廃墟で、男性二人と女性一人が練炭自殺をしたらしい。三人はかなり有名な劇団の俳優たちだと」

「……どうして自殺を?」

「メモに自殺をほのめかすような文章があったから、間違いなく自殺と警察は見ている」

「なら解剖の依頼は来ないわね」

藍と聖が話していると、「何の話ですか?」と大河が割り込んでくる。すると、聖の顔はニヤリと変化した。

「奪ってしまって悪かった。きちんと返却しよう」

そう言い、聖は同じくニヤニヤする朝子を連れて部屋から出て行く。

顔を真っ赤にする大河を見て、藍は不思議そうな目を向けていた。



解剖の報告書を書き、藍は立ち上がる。午後七時近く、ようやく仕事が終わった。

「お疲れ様です」

藍はまだ仕事をしている朝子たちに声をかける。