藍に起こった出来事など知らず、大河は次の日研究所に顔を出す。

「こんにちは〜!!」

藍に対し好意を抱いている大河にとって、藍と同じ空間にいられることは天国のようだ。

「今日こそは一緒に食事ができるといいな……」

ひとりごとを呟いていた大河だったが、藍がいないことに気付く。

「木下さん、霧島さんはお休みなんですか?」

いつも藍はほとんど休むことなく椅子に座って仕事をしている。こんな日は珍しい。また風邪を引いたのだろうかと大河は思った。しかし、朝子の表情は固い。

「それが、朝から無断欠勤しているの。所長からの電話にも出ないし、誰が電話しても出ないんだよね」

「えっ!?」

予想外の言葉に大河は驚く。そして朝子の肩を掴んだ。

「家!霧島さんの家には行ったんですか!?」

「ううん、行ってない」

朝子がそう言った刹那、大河は表情を変えて研究所を飛び出していく。藍の自宅へと全速力で走った。