彼らはおいしそうにぺろぺろと大きな月を舐めている。
ずっとやすまず舐めている。
あっという間に月の形が変わってゆき、そして、わずかに月が楕円形になったところで、やっとヤギの紳士が終了の号令をだした。

ヤギたちはみなにこにこと顔じゅうを黄色くしながら屋根の上で思い思いにくつろぎ始めた。
ヤギの紳士が胸ポケットからだしたハンカチで黄色くなった顔を拭きながら屋根から降りてきて、玄関に座ったままだった私の隣に腰を掛けた。

「ええ、ええ本日のご協力ありがとうございます。かれこれ半月ぶりだったものですから、ずいぶん見苦しいお姿をお見せいたしました。
しかし、これからたっぷり半月は月を楽しめます。また、明日月を食べるのが楽しみでなりません。」

「しかし、毎日食べているとなくなってしまいませんか?」

「大丈夫です。半月食べたら、半月食べるのを休んで、月を太らせるのです。そして、真ん丸になったところで私たちが食べるのです。それに、月は太りすぎると空に浮かんでいられなくなり最後には破裂してしまうのですよ。」

ここでヤギの紳士は声をひそめて

「ここだけのところなんですがね、実は今日はだいぶ危なかったのですよ」

と笑った。
どうも私の家は月に押しつぶされるところだったらしい。