私は、残りのおかずを口に入れながら、午前中の出来事を思い返していた。

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あれから、真人君は2限目の授業に出なかった。でも、3限目からは教室に戻ってきて、何事もなかったかのように普通に授業を受けていた。


真也君は、その美貌と優しい性格から、クラスの女子の質問攻撃にあっていた。

休み時間のたびに、真也君の机を囲んで、「部活なにやってた?」とか、「趣味ってなに?」とかを永遠にたずねられてる。

かわいそうだと思いつつ、これが転校生の宿命ってものなのかな?と勝手に思ってる。



私は、隣の席ということもあり、群がる女子の被害を受けないように、休み時間はきいちゃんと廊下で過ごしていた。



3限目の授業が終わった後、また、きいちゃんと廊下で話していると、うしろから「おいっ。」って言う声がした。

何かと思って振り向くとそこには上杉真人君が立っていた。



「え?」びっくりして声が出ないでいると、真人君は目をそらしながら小さな声で

「さっきは悪かった。」
とボソッと呟いて教室に戻っていった。

すれ違うとき、横顔が微妙に赤くなっているのが見えた。


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「...ろ!...ひろ!ちひろ!ってば!」ぼんやりと、そんなことを思い出していた私は、きいちゃんの声で現実に引き戻された。


「あ、ごめん。で、何だっけ?」



「もー。早くお弁当食べなくちゃ、昼休み終わっちゃうよ。って言ってるの!」




私は時計を見る。
「あー!あと10分しかないじゃん!」
ヤバい。次の教室どこだっけ。
私は、残りのお弁当をかきこんだ。



「でも、ちひろがボーッとするのって珍しいね。何考えてたの?」




「んー。今日来た転校生、なんか対照的だな~と思って。」




私がそう答えたとたん、きいちゃんは空を見上げた。

「明日は雨かな?」



「なんで?」



「だって、ちひろが、他人のこと気にするなんて珍しすぎて。今まで、ちひろの口からクラスメイトを心配することなんか一言も出なかったのに。」

きいちゃんは、横で、成長したな~と感激してる。




「失礼な。ちゃんと、いつも心配してるよ。次の中間テスト、きいちゃん赤点取りませんようにって(笑)」



「ひどい~。これでも、最近は3教科以外頑張ってるんだよ!」




「いや、まずは3教科を頑張ろうか?宮下さん?」



今日の昼休みは、こんな会話で終わりをむかえた。