「なんか、三枝くんって、さざ波みたいな人だよね」

私がボソッと言うと、

「何その詩人みたいな言い方」
「だって、いろんな人のところ渡り歩いて、誰とも仲良くて、でもなんか深い付き合いはせず、去っていく。みたいな感じじゃない?」

「さざ波ねぇ。私に言わせりゃ、波打ちぎわを漂うクラゲだわ」
物事をなんでもずばっと言うサヤカ。

「それよりさぁ、結衣に何も言ってこないの?」
「何もないよ。やっぱり思い過ごしだよ」

私自身そう思いたくて自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
けれど、実際はそんなことなかった。