キミと歩けば

その時、玄関でガチャリと音がしたかと思うと結衣が入ってきた。
慌てて涙を拭き結衣を迎えた。

「すみません遅くなってしまって。せっかく来て頂いたのにお待たせして」
と言いながら頭を下げた。

「こちらこそ。ごめんなさいね急にお呼びたてして。授業だったんでしょ?」
「あっ、いえ。午後の授業は休講になったので大丈夫です」
「そうだったの」
一言だけそう返すと母親は結衣の目を真っ直ぐに見ていた。その視線を反らせずにいる結衣。
そして、涙を拭ったものの声を出せば泣いていたのがバレそうな僕。なんとなく蚊帳の外の父親。