キミと歩けば

「すみません。迎えの者ですが、ちょっと失礼します」
そう声をかけ店の奥まで行くと不安そうな顔の結衣が待っていた。
「結衣」
「ゆうちゃん！こっち」

部屋を覗くと確かに人だかりができていた。
「はっしー！もう大丈夫だよ」
結衣の声にその場にいた全員が顔を上げた。
確かに腕からはポタポタと血が落ちている。
はっしーと呼ばれた青年もまた不安そうな顔で自分の腕を眺めていた。

「こんばんは。佐伯がお世話になってます。南陽大学病院の原田です。ちょっと診せて下さいね」
そう言って腕を掴んだ。
「えっ、佐伯の彼氏さん？医者ですか？」
「ええ。とりあえず手はここでキープして下さい」
店員さんから受け取った救急箱の中から使えそうな物を探し準備をしながら話を聞いた。

「血が全然止まんないです」
「何分ぐらいですか？」
「五分ぐらいです」
「ちなみに、お酒はどれぐらい飲みました？」
「えーと、ビールを３杯ほど…」
「ここ、押さえますね」