キミと歩けば

「佐伯さん、嬉しそうでしたね」
「そうだね。頑張ってたみたいだし」
「それに、元気だし。知らずに見たら本当に病気なのかなって思いますよね」

「今は比較的、落ち着いてるからね」
「仕事も許可したんですよね?」
「したよ。もう卒業するからね」
「もうすぐハタチになるのに。仕事、続けられるんですかね?」

「さぁねぇ。そんなのやってみないと分からない。それに就職したいっていうのが彼女の希望だったし、4月からなにもせずに、のんびり過ごすなんてきっと望んでないよ。生きる希望を無くしたら、病気にだって負けるよ」
「生きる希望…」

「そっ。だから僕らは患者さんと向き合って、希望通りの生活が送れるようにサポートする。外科医だからってなんでもかんでも、ズバズバ切ってハイ、終わりって言うのは僕の性分じゃないしね」
「なんか…先生カッコいいですね。男だけど惚れそうです!!」
「憧れてくれるのは嬉しいけど、惚れられるのは遠慮するよ(笑)」
「先生方!!私語は終わって下さい。次の患者さん呼びますよ」
ピシャリと看護師さんに言い放たれてしまった。