ケホッケホッ…
「咳は?いつから出てるの?」
「咳?ケホッ。そう言えばそうだね。朝?お昼食べてから?ぐらいかな?」
「そう言うのは、報告すべき事案に値するんだけどね」
「あっ、じゃあ今、報告します。咳がでます。風邪ですか?」

呆れて返す言葉がない。
「はぁ…他には?喉が痛いとか頭が痛いとかはない?」
「んー…うん。大丈夫」

その言葉を聞きながら、聴診器を準備すると
「食事中にごめんね。少しだけ後ろに背中付けてもらえる?」
起こしていた背もたれに、もたれ大人しく診察を受けてくれた。

「うん。気管の音は問題ないから風邪と判断するにはまだ難しいね。これから症状が出るかもしれないし。もし、何かあればちゃんと夜勤の看護師さんや先生に伝えてね」

「はーい」
「じゃあ食事、続けて。残さず食べるんだよ」
それだけ伝えて部屋を出た。

後は今の事をカルテに記載し、申し送りをすれば今日の仕事は終了。時計を確認し、よし20時までには終わろう。そう心に決めた。