キミと歩けば

諦めて体温計を挟んだ。
何を言うでもなく沈黙のままの気まずい雰囲気が漂う診察室に、乾いた電子音が響いた。
自分で確認してから、無言で渡すと、体温計を受け取り、はぁとため息を一つついた。
「いつから?」
「今朝。でも朝は熱なんてなかったの」
「そう。どこか痛いとこは?」
「ノドだけ」
2、3回頷きながら聴診器を耳にかけたので、大人しく着ていた服の裾を持った。
「深呼吸してて」そう言うと裾の方から聴診器が入ってきた。