「なんで、お医者さんになったの?」
「なんでって聞かれると難しいんだよなー。憧れてた職業でもないし、ずっとなりたかった訳でもないし。高校の時の担任に勧められて、受験したら合格したから。そのまま来たって感じ」

「じゃあなんで担任の先生は勧めたんだろうね」
「さぁねー。まあでも、今となっちゃ勧めてくれた事は感謝してる。おかげでちゃんとご飯食べられてるし、何より結衣と出会えた」

「卒業してから会ったことある?」
「ううん。何年か前に同窓会のハガキが来てたけど行けなかったから」
「じゃあ今度、同窓会あったら行けば?」
「どうかなー。タイミングによるけどね。結衣は同窓会とかクラス会とかってないの?」
「ないんじゃない?まだ卒業したばっかりだし、来年のお正月には成人式だし」

「そっか成人式か。もう遠い昔の思い出だよ」
「ゆうちゃんが二十歳の頃ってなんか想像できないなぁー」
「僕が二十歳ってことは結衣は10歳でしょ?それこそ想像できないなぁー」
「でも不思議だね。そんな二人が今こうして一緒にお茶飲んでるのって」

10年前には想像できなかった未来が今ここにある。
10年後もゆうちゃんの隣で笑っていますように。