キミと歩けば

「は、はい。じゃあ」

注射なんだから痛くない訳ない。
反射的に腕を捩ってしまう。

「終わりました。よく揉んでおいて下さい」
そう言って椅子ごと離れて行った。

すると、ゆうちゃんは偉かったね。って言うみたいに微笑みながら、頭をポンっとして

「今夜はお風呂に入ってもいいけど、あんまり強く擦らないようにね。次は来月の3日でどう?」

「うん、大丈夫。そうだ先生!もうすぐ学園祭があるの。来てよ」

「そっか。もうそんな時期か。いつなの?」
「来週なの。学部でねカフェするんだ」
「カフェ?」
「うん。今みんなで、頑張って準備してるから。先生だったらコーヒー一杯ぐらいご馳走するよ」

「ありがとう。都合見て行けそうなら、行くようにするよ。でも準備もほどほどに、頑張りすぎちゃダメだよ」
「はーい。分かってまーす。じゃあまたね」
「はい、お大事に」

そんな話をして診察室を出た。後、数時間もすればまた会うのに、さよならする時はいつもちょっと寂しくなる。