セミが活動的になり、うるさいほどに鳴く昼下がり。私は駅前のカフェにいた。

「……そっか」

今まで私の話を聞いてくれていた人は優しげに笑ってそう言った。

「これで良かったって心から思える日が来たらいいな」

独り言のように呟いた私に彼は言う。

「大丈夫だよ。きっと来る」

そう言って、彼ーーー蓮先輩は目の前にあるメロンソーダフロートのアイスを一口口に入れた。

蓮先輩は意外と甘党派だ。

「葵ちゃんなら、きっと大丈夫」
「なんですか、その自信」
「だって葵ちゃんだし。何かあっても俺たちがついてるし」

蓮先輩が言う大丈夫の中に俺たちがついてるしという言葉で、そういう意味もあることに気付いて私は笑った。

そうだよね。私には真央や悠斗、蓮先輩がいる。間違えた答えを出していたらきっと正しい道へと誘ってくれるだろう頼れる人たちがそばにいる。

「それからは奏に会うことあるの?」
「いや、全く」

あのキャンプから半月が経った。真実を知り、過去を知り、あの日私は答えを出した。約束や想いを忘れて、何もないただの先輩後輩に戻る。それが私が出した答えだった。

今日は少し時間が取れたからと言って予定を開けてくれた蓮先輩を誘い出し、私が出した答えの報告をしている。お礼を兼ねて、今日は私の奢りだ。

「すれ違うこともないの?遠くで見えたとか」
「全然会わないし見ないです」
「まぁ、葵ちゃんの大学広いしね」
「そうですね」

私の目の前にあるのは蓮先輩と同じメロンソーダフロート。

アイスを一口、口に放り込むと気持ちの良い冷たさとメロンソーダのシュワシュワが口いっぱいに広がった。

美味しい。やはり夏はアイスに限る。